簡潔な情勢判断

中国の輸出先の欧州が債務問題で足を引っ張っているから、鉄鉱石等の資源産出国が低迷している。米国の景気は上向いてきているようだが、FRBの緩和策の出口付近で世界中の資金が動いて、活発な投資先の東南アジアを中心にした新興国の資金引き上げで通貨安の現象となっている。注意するのは、紛争や気象もあるが、南欧を中心とした債務問題と理財商品を中心とした中国の短期金利市場で、確実性が高いと考える。欧州の問題は、ユーロ各国の思惑が一致しないから、というより、ドイツ国民の負担感と考えるか、南欧の国民の労働意欲に期待すると考えるか、どちらも実現性に疎いと思う。結局、ずるずる十年以上引きずると予想する。中国の問題は、短期金利市場が自由化されておらず、インフレ率より安い預金金利とか、銀行の融資も規制で絞られていることで、資金の供給元と需要先が迂回で融通していることが、問題を顕在化していない。昨年末に一件問題が生じたようだが、迂回の動きはなくなっていない。こうしてみると、金融市場が十分に機能していれば、心配の種も減ると考えるのは甘い考えだろうか。債務問題は、情報が十分に浸透していれば、高金利でリスクが織り込まれるか、調達できずに調達可能に向けて努力するとか、問題は市場機能に委ねられると考える。市場参加者は、現在の情報も欲しいが、見通しこそ重要な情報だと考えるから、FRBの出口に関する発言は賢いと思う。中国の理財商品に関しても、いきなりの規制より規制のロードマップの提示で軟着陸も可能性があると思う。欧州の問題は、難しい。多分、政治問題だろう。単一通貨でなければ、通貨安やインフレといった市場機能で解消できることが、手段を拘束されて国民の犠牲に向かう方向しか残されていない。つまり、ユーロ離脱か、南欧国民の犠牲か、ユーロ強国の犠牲か、みたいな選択肢しか事実上ない。ただ、ドイツがスペインだったか、資金の融通の仕組みを作ったみたいで、このような工夫は期待する。日銀は、FRBの市場との疎通に関して、学習していて欲しい。市場参加者の欲しがっている情報をしっかり認識することが肝要だ。それが、良い感度を保つと考える。