沸点超え

液体が温度上昇し続けても、沸点で温度は停止する。このようなことは何かに似ている。

中等国の罠という問題がある。これを融点とするなら、沸点は何だろう。まだどの国も迎えていないのかもしれないし、迎えていても認識出来ていないのかもしれない。

現実には多段階の沸点があるのかもしれないから、一つの候補と考えるなら、現在の先進国がその状態、つまり、沸点の状態で温度上昇が抑止されていると考える。

どのような抑止状態であるかと言えば、金融機能の効率向上の停滞と所得の偏在という症状ではないだろうか。

金融機能の効率向上の停滞とは、要するに本来的な金融機能の充実での金融の向上というよりも、収益に過度に特化した発展という問題だろう。悪い表現をするなら、カジノ化だ。本来的向上ならば、実体経済に寄与して沸点の突破になるということだ。

もう一つの所得の偏在、この場合は所得や資産が偏っていることを表現しているが、その偏在とは、一方で超富裕層を生み出し、もう一方で低所得層を広げている状況を指す。要因はカジノ化に類似する可能性がある。ただし、国際的競争市場による新興国との賃金競争の面を認めざるを得ない。この賃金競争を強調すれば、沸点は先進国以外の成長に依存しているとも言える。

上の二つは、単に思いついたことを挙げただけで、内容を主張したい訳ではない。つまり、別の内容でも構わない。それよりも、沸点超えを認識することが必要だと思っている。

抑制要因を見つけることも大事だが、抑制状況にあることを認識することが優先されるだろう。その認識とは、超金融緩和状態の長期継続と資産バブルの潜行、低成長にあると思う。さらに、新興国の潜在的問題の合わせ技にある。勿論、否定を歓迎したい。無用な不安ならば、非生産的だからだ。ただし、説明が必要だろう。

では、沸点超えをするためにどうするか。それは、わからない。というより、沸点を認識してから、問題の所在を探すことになると考えているからだ。上に挙げた二つは候補でしかない。

新議長は、もしかしたら新興国への配慮があるのかもしれない。しかし、それが適切な対応なのかは難しい。深く潜行する資産バブルも一方ではあるからだ。このように、ある局面だけを切り出して解決に向かうのは、沸点近辺の複雑な世界では単純過ぎると考えられる。

直面する現実ではなく、抽象的な解決は多様性と冗長性だと考えている。つまり、少数の限られた人数による見識に委ねる方法ではなく、多数の限られた権限に分散した判断機能という方法ということだ。抽象的には、このように説明出来るが、では現実世界での対応という見方で説明することは困難だ。

この沸点問題も、色々と整理してから考えた方がよさそうだ。

悩ましいことは沢山ある。一つ切り出して考えることがよいのか、関連しそうな範囲を一括りで考えた方がよいのか、よくわからない。

もう一つあった。価値観の転換みたいなことだ。例えば、既存価値観では義務的評価とされることが、権利的評価に転換するような、世界観の転換みたいな話も候補と考えられる。このような話になると、思想に近似するから悩ましい。色々難しい。